
Ryu’s Voice #185

代表取締役社長 村野隆一
さて、昨年から続く、いわゆる「令和の米騒動」。
当初は数カ月で落ち着くだろうと言われていたものの、米の価格は
依然として高騰を続けており、今や日本社会における深刻な課題の
一つとなっていることは誰もが認めるところかと思います。
そんな中で大きな波紋を呼んだのが、当時の江藤拓農林水産大臣に
よる「米は買ったことがない。支援者からもらうので売るほどある」という衝撃的な発言でした。
この発言は各種メディアのみならず、SNS上でも大炎上。
結果として江藤氏は辞任に追い込まれ、後任にはご存知の小泉進次郎氏が就任。再び世間の注目を集めることとなりました。
そして小泉大臣が最初に打ち出したのが、政府備蓄米の流通ルートの見直しです。従来の入札方式をやめ、随意契約方式に変更。
2021年・2022年産の、いわゆる“古古米”や“古古古米”と
呼ばれる約30万トンを一気に市場に流通させ、末端まで届ける方針を発表しました。
ところが、今度はこれに反応したのが国民民主党の玉木雄一郎代表。「あと1年したら動物のエサになるようなもの」と発言し、再び炎上騒ぎに。この発言については、確かに制度上2021年産米は来年には飼料用として回される予定だったものではありますが、「エサ」という表現はあまりに不用意で、消費者や農業関係者に与えた印象は極めてネガティブ。
世間では「軽率だった」との声が大勢を占めているようです。
では実際のところ、備蓄米の品質や味はどうなのでしょうか。
基本的に、政府の備蓄米は温度や湿度の管理が徹底されており、
一定の品質は保たれているとされています。
新潟大学の三ツ井敏明教授によると、2024年産の新米と比べるとややパサついており、香りや甘みに差はあるものの、2021年・2022年産でも「普通においしい」との評価で、特有のにおいもなく安心して食べられる水準にあるとのこと。
また、炊飯器メーカー・象印のアドバイスによれば、「古米は水分が抜けているため、水加減をやや多めにするという工夫は必要だが、
今や炊飯器の技術も進化しており、古米でも十分においしく調理できる」そうで、「古い米=まずい」「古い=エサ」といったイメージは必ずしも正しくないようです。
いずれにしても、今回の「米騒動」は国民の生活に大きな影響を与えているわけですが、一方では私たちが改めて「食のありがたみ」や「日本の農業の持続可能性」について考える良い機会になっているようにも思えます。
こんな飽食の時代だからこそ、日々の食卓に並ぶ“当たり前”の
背景に目を向けることが、今私たちには求められているのかもしれませんね。